コンドライト隕石が語る太陽系の歴史

天文

私たちが暮らす地球。その誕生の瞬間は、46億年前にさかのぼると考えられています。
この「46億年」という数字は、どのようにして導き出されたのでしょうか?
地球の岩石を調べればすぐに答えがわかりそうですが、実はそう単純ではありません。今回は、地球の年齢を知る手がかりとなった「コンドライト隕石」に焦点をあて、太陽系誕生の謎を調べてみます。


地球の岩石からは正確な誕生日がわからない?

地球の年齢を調べるには、当然「地球に残るもっとも古い岩石」を探して年代を測定する方法が思い浮かびます。
しかし地球はプレートテクトニクスという大規模な地殻変動が絶えず起こり、岩石がマグマに溶けたり、風化して再び堆積したりを繰り返しています。

そのため、地球誕生当初の岩石はほとんど残っていません。
現在わかっている最古の鉱物はオーストラリアで発見されたジルコンで、約43~44億年前の年代が測定されています(関連記事:ジルコンが語る地球誕生初期の姿 ― 46億年の歴史)。
しかしこれは「地球が誕生した瞬間」ではなく、「すでに地殻が形成され水も存在していた時期」を示すもの。つまり、まだ少し“後の時代”なのです。


ヒントは宇宙からやってくる隕石

そこで科学者たちが目を向けたのが「隕石」です。
隕石の中には、太陽系が誕生したときの物質をほぼそのまま残しているものがあります。それが「コンドライト隕石」です。

コンドライトとは?

  • 主にケイ酸塩鉱物(かんらん石や輝石)と金属鉄・ニッケルからなる
  • 「コンドリュール」と呼ばれる小さな球状の粒が特徴的
  • 化学組成は太陽に非常に近く、“太陽系の原始的な物質”と考えられている

コンドライト隕石は、現在の地球や月のように分化(内部が溶けて金属核と岩石に分かれること)していないため、太陽系誕生当初の情報を閉じ込めている「タイムカプセル」なのです。


年代測定の決め手 ― 放射壊変時計

隕石の年齢を測定する方法として用いられるのが放射年代測定です。
特に、ウランが鉛へと壊変する速度(半減期)を利用するU-Pb法は、数十億年のスケールで非常に精度が高いことで知られています。

コンドライト隕石に含まれる鉱物を詳細に調べた結果、その多くが約45億6千万年前に固まったことが明らかになりました。
これは「太陽系そのものの誕生時期」を意味し、当然その一員である地球もほぼ同じ頃に形成されたと考えられるのです。

このため、地球の年齢は 46億年 とされています。


小惑星帯(メインベルト)から飛来する証人

では、これらのコンドライト隕石はどこからやって来たのでしょうか?
その多くは、**火星と木星の間に広がる「小惑星帯(メインベルト)」**が起源とされています。

小惑星帯は、太陽系初期に惑星になりきれなかった残骸が集まる場所。ここには今も原始的な天体が多く残されており、時折その破片が軌道を外れて地球に落ちてきます。


コンドライトが教えてくれる太陽系の始まり

コンドライト隕石の研究から、私たちは次のような事実を知ることができます。

  • 太陽系は約46億年前に形成された
  • 最初の固体物質(コンドリュールやカルシウム・アルミニウム包有物)が急速にできた
  • それが集まって微惑星を形成し、やがて地球や火星などの惑星に成長した

つまり、コンドライトは単に地球の年齢を知るためだけでなく、「惑星がどのように生まれたのか」という宇宙進化の物語を解き明かす重要な鍵でもあるのです。


まとめ

  • 地球の最古の鉱物はジルコンで約43~44億年前
  • しかし、地球誕生の瞬間を知るには「隕石」に頼る必要がある
  • コンドライト隕石は太陽系の原始的な物質をそのまま残す
  • 放射年代測定の結果、約45億6千万年前=地球の年齢46億年という結論に至った
  • 隕石は小惑星帯から飛来する「太陽系のタイムカプセル」

私たちが足元に立っている大地は、46億年前に始まった壮大な宇宙の歴史の一部なのです。夜空を見上げるとき、そこには隕石が語りかけてくれる太陽系の記憶が潜んでいるのかもしれません。


✅ 本記事の内容は2025年9月時点の科学的知見に基づいています。新しい研究により解釈が更新される可能性があります。

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