海底にそびえる煙突 ― 海底チムニーとは?

地学

地球の深い海底には、まるで工場の煙突のような不思議な構造物が存在します。それが海底チムニー。チムニーとは英語で「煙突」を意味し、深海の熱水噴出孔から噴き出す鉱物が積み重なってできた塔のような堆積物のことを指します。

今回は、Pen特別編集号にて気になった海底チムニーについて調べてみました。

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どこで見られるのか?

海底チムニーは主に海嶺(かいれい)や海溝付近、つまりプレート境界で形成されます。ここでは海底下深くから熱せられた海水が、地殻の割れ目を通って海底に噴き出します。この熱水は非常に高温(300〜400℃)で、地殻内の岩石から鉄・銅・亜鉛・硫黄などの鉱物を多く含んでいます。

チムニーの作られ方

熱水が冷たい深海水(約2℃)に触れると、溶け込んでいた鉱物が急速に析出して沈殿します。この沈殿物が何層にも重なり、少しずつ塔のように成長していきます。

  • ブラックスモーカー
    熱水に硫化鉄などの金属硫化物が多く含まれると、黒い煙のような粒子が噴き出します。これが堆積して黒いチムニーを作ります。
  • ホワイトスモーカー
    熱水に硫酸バリウムやシリカなどが多く含まれると、白っぽい煙と白灰色のチムニーになります。

深海のオアシス

チムニー周辺は、地球上でも最も過酷な環境の一つです。太陽光は届かず、高圧・高温で有毒な化学物質も多く存在します。しかし、ここには化学合成細菌を基盤とした独自の生態系が発達しています。
チューブワーム(ハオリムシ)、シロウリガイ、エビ、カニなどが群れをなし、地上とはまったく異なる生命の世界が広がっています。これは光合成ではなく、硫化水素をエネルギー源とする化学合成によって支えられています。

資源としての注目

海底チムニーやその周辺の堆積物には、銅・亜鉛・鉛・金・銀などの金属資源が豊富に含まれています。そのため近年では「海底熱水鉱床」として、将来的な採掘対象として注目されています。ただし、深海生態系への影響や環境保護の観点から、慎重な議論が必要です。

地球科学的な意味

チムニーは、地球内部からの物質循環や海洋化学の理解にとって重要な存在です。また、生命の起源研究においても、熱水噴出孔環境は「生命が誕生した可能性のある場所」の有力候補とされています。深海探査では、火星や氷衛星エウロパ・エンケラドゥスなど、他天体の熱水活動との関連も議論されています。


まとめ
海底チムニーは、深海の熱水噴出活動によって形成される鉱物の塔です。ブラックスモーカーやホワイトスモーカーなど種類があり、豊富な金属資源と独自の生命圏を育んでいます。地球科学・資源学・生命科学の交差点にある存在として、今後も探査・研究が進むことでしょう。


注意:本記事の内容は2025年時点の研究情報に基づきます。新たな発見や技術進展により解釈が変わる可能性があります。

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